金正男氏殺害で北朝鮮の“やらせ”を暴く記録映画「太陽の下で」が好評 上映館が劇場規模拡大

北朝鮮金正男キム・ジョンナム)氏殺害事件を受けて、公開中のある記録映画が注目されている。

 「太陽の下で 真実の北朝鮮 DVD 」は、北朝鮮当局から“やらせ”を強要されたロシア人監督が、秘密裏に隠し撮りをした記録映画。幸せな家庭を演じる家族や、日本を敵視する愛国教育の現場などが白日のもとにさらされている。1月から上映しているシネマート新宿(東京・新宿)は「事件を受けて観客動員が急増している」と、より収容人数の多い劇場での上映に切り替える事態になっている。

 シネマート新宿(スクリーン1と、スクリーン2)では、事件発生から4日後の17日、指定席券が完売、立ち見券を売り出した新感染 ファイナルエクスプレス DVD 。このため当初62人収容のスクリーン2だったのを、335人収容のスクリーン1に切り替えて上映している。

 この映画のヒロインは8歳のジンミちゃん。模範労働者の両親と北朝鮮の首都・平壌で暮らし、故金日成(イルソン)主席の生誕記念「太陽節」で披露する舞踊の練習に余念がない。エリートの娘を持った両親は周囲から祝福を受け、まさに理想の家族そのものだ。

 ところがこれらはすべて“やらせ”だった。北朝鮮当局が用意したシナリオ通りに、北朝鮮の監督が演出したものだ徳恵翁主 DVD 。ありのままの北朝鮮を撮りたかったビタリー・マンスキー監督は、当局の指示通りにカメラを回したが、撮影の目的を真実を暴くことに切りかえ、録画スイッチを入れたままの撮影カメラで隠し撮りを敢行した。

 来日したマンスキー監督は「撮影時も一つ一つの条件や要求を受け入れざるを得ない状態だった太陽の下で DVD 。こんな不自由が待ち構えているなんて想像だにしなかった」と厳しい表情で語る。北朝鮮政府から撮影許可を得るまで2年、平壌の一般家庭の密着撮影に1年を要した。「監視されながらシナリオ通りに撮影をしたので、撮影済みのフィルムは大丈夫だと思ったら、毎回提出していくつかのカットはうまくないと廃棄処分にされた」。未検閲のフィルムをどうやって国外に持ち出したかについては「詳細を言ってしまうと犠牲者が出るから」と明かさなかった。

 映画には児童たちが「愛国教育」を受ける場面もある。ジンミちゃんが「日本人は私たち人民を痛めつけた、わが国を占領した悪者です」と発言すると、女性教師は「その通りです」と満面の笑みを浮かべる。

 この教師はこんなことも語りかける。「アメリカ人と南朝鮮人、日本人を憎む気持ちは勉学に励むことで貢献できるのです」(字幕表記)。ただ、カメラは授業中に集中力が切れたのか、少女らがあくびをしている姿もあまさずとらえる。

 ツイッターでは「観に行くかどうか迷ってたが、金正男暗殺で興味が沸いてしまった。同じ思いの人が大勢いるように感じた」「自由の無い世界とは、これほどまでに人間の心をむしばむのか」などの声が寄せられている。